立体商標「ひよ子」事件
2005年8月17日
8月10日の毎日新聞に、福岡市の老舗製菓会社「ひよ子」の所有する立体商標を巡る事件記事が掲載されました。
この事件は、福岡市の株式会社ひよ子が「饅頭」の形状について立体商標の商標権を所有していたところ、同じ福岡市の製菓会社が特許庁に対し、その立体商標の登録無効を求めていた審判事件で、今般、その無効審判は成立しない、との審決が出されたものです。
立体商標は、1996年(平成8年)の商標法改正により登録が認められるようになった比較的新しい制度です。その制度導入当初は、飲食店の店先のカーネル・サンダース人形やペコちゃん人形等、店頭看板などの登録が認められていましたが、商品自体の形状や商品の包装の形状に関する立体商標が認められた事例は殆んどありません。サントリーの洋酒の瓶の形状についても、登録が認められていません。なお、商品の包装等に関する立体商標が登録された例はありますが、その殆んどは文字や図形との組合せであり、本件のように、商品自体や商品の包装のみの登録はごくごく僅かです。この要因の一つとして、実際の使用態様と出願商標の同一性に関する特許庁の審査基準が厳格であることが挙げられます。
このように、本件のように商品の形状そのものについて立体商標が認められたのは極めて珍しい事例です。実際、この「ひよ子」の立体商標についても、1997年(平成9年)に出願された後、審査段階では拒絶査定が出され、不服審判を請求した結果、使用による顕著性が認められたことにより、2年前の2003年(平成15年)8月29日に登録されたばかりでした。
新聞記事によると、株式会社ひよ子は、2004年に、類似の形状の菓子を製造・販売する競合他社に対し、その立体商標に関する商標権に基づく侵害訴訟を福岡地裁に起こしており、今回の無効審判は、その相手方による対抗手段として請求されたようです。立体商標に基づく商標権侵害訴訟としては、初めての事例ではないでしょうか。立体商標の類似性に対する判断等、今後の成り行きに注目する必要がありそうです。
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