「がんばれ日本」について・・・その1
2003年10月28日
10月16日、商標「がんばれ日本」に関する東京高等裁判所の判決があり、マスコミでも取り上げられています。中には、今回の判決によって「がんばれ日本」の商標登録が認められたかのような報道もあります。
しかし、今回の判決は、「不使用取消審判」に関するものです。この登録商標は従前から存在していたのです。
「ドクター中松」こと、中松義郎氏の「フオルッアジャパン/がんばれ日本」(第16類:印刷物)の商標登録(第3300059号)に対し、JOC(財団法人日本オリンピック委員会)が不使用に基づく取消審判を請求し、特許庁は、JOCの請求を認めて登録取消の審決を出したところ、中松氏が東京高裁にその審決の取消を求めていた事件で、10月16日、東京高裁は、中松氏の請求を認め、登録を取り消す必要はない、と判断しました。
不使用取消審判とは、登録商標が3年以上指定商品・役務に使用されていない場合、誰でもその登録商標の取消を求めることができる審判です。したがって、今回の判決により、「がんばれ日本」が登録されたわけではありません。中松氏の当該商標は、平成9年5月2日に登録されています。
この判決の争点は、誰が使用しているか、という使用主体の問題です。不使用取消審判を請求された商標権者は、その登録商標を使用している証拠を提出しなければなりません。中松氏が提出した証拠は、会報と会報の発行目録でしたが、その会報の題号として「フオルッアジャパン」文字を上段に小さく、「がんばれ日本」を下段に大きく表され、裏表紙末尾に「発行者 がんばれ日本 価格100円」の文字、及び、住所、電話番号、ファックス番号等の記載がありました。特許庁は、このような証拠をもってしては商標権者である中松氏の使用とは認められない、と判断し、その判断(審決)の是非が東京高裁で争われたのです。
判決は、当該会報の記載内容が専ら中松氏個人の思想・信条等、その発明を紹介・宣伝するもの等であるとしても、その発行は、中松氏自身の意思決定に基づき、中松氏自身又はその意を受けた者によってなされていたと認め、審決を取り消しました。
即ち、この判決は、不使用取消審判における使用主体の認定に関して判断しただけであり、実際に提出された証拠をもって使用と認められるか否かは、差戻審である審判において改めて審理されることになります。
また、この判決が及ぼす影響についても取り沙汰されていますが、もともと商標登録の取消審決が確定していない以上、中松氏の商標権は従前から存在していたのです。この判決によって登録が認められたものではなく、JOCや協賛各社が急遽使用できなくなる訳でもありません。
しかも、中松氏の所有する商標権は「印刷物」についてだけです。したがって、JOC又はその協賛各社にとっては、定期刊行物の題号等としての使用が制限されるだけで、JOCや協賛各社がキャンペーンのフレーズとして、ポスター等に「がんばれ!ニッポン!」を使用することは原則として何等制限されない、と考えられます。
実際、JOCは、以下のように、幅広い商品・役務について「がんばれ!ニッポン!」の登録商標(第4470504号、第4481000号等)を所有しています。
第1類:化学品等 |
第22類:原料繊維等 |
第2類:塗料等 |
第23類:糸 |
第3類:化粧品等 |
第24類:織物製品等 |
第4類:燃料等 |
第25類:被服、靴等 |
第5類:薬剤等 |
第26類:裁縫用品等 |
第6類:金属製品等 |
第27類:敷物等 |
第7類:産業用の機械等 |
第28類:おもちゃ、運動用具等 |
第8類:工具類等 |
第29類:食肉、魚介類等 |
第9類:電気製品等 |
第30類:菓子、加工食品等 |
第10類:医療用機械器具等 |
第31類:木、種子等 |
第11類:電熱用品等 |
第32類:ビール、飲料等 |
第12類:乗物等 |
第33類:洋酒等 |
第13類:銃砲等 |
第34類:たばこ等 |
第14類:貴金属類等 |
第35類:広告等 |
第15類:楽器等 |
第36類:金融、保険等 |
第16類:文房具類等 |
第37類:工事等 |
第17類:ゴム製品等 |
第38類:通信等 |
第18類:かばん類等 |
第39類:輸送等 |
第19類:建築用品等 |
第40類:加工等 |
第20類:家具等 |
第41類:オリンピック競技大会等 |
第21類:ガラス製品等 |
第42類:レストラン、ホテル等 |
|