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「マグロ一筋」 

2005年4月19日

 2005年4月18日(月)の東奥日報において、青森県大間町のまちおこしグループ「あおぞら組」が町をPRするため2002年から作製・販売してきたTシャツのロゴマークを商標登録した旨の記事があった。 このTシャツは、昨年のアテネ・オリンピック柔道で銀メダルを獲得した同町出身の泉浩選手を応援した町民らが着ており、以降、Tシャツの人気が出たため、昨年8月下旬に出願し、今年2月24日に登録された。 商標権者は、「あおぞら組」組長と、ロゴマークをデザインした、個人2名の共有であり、同組長は、「『マグロ一筋』を大間の知的財産として大切に育てていくため出願した。グループで権利を押さえたいということではなく、地域資源として大切にしていきたい。」とのコメントを出している。  また、昨年9月にTシャツの類似品が出回るという騒ぎがあったようで、同新聞社の記者によると、この商標登録で類似品防止にも一定の効果がある、とコメントされている。

 この商標登録がまちおこしの一環として価値があることは事実であり、それを決して蔑ろにするつもりはない。ただ、まちおこしの認識と商標登録の間には、若干の相違がある。

 まず、まちおこしグループの商標に対する認識である。新聞記事によると、Tシャツのデザインを商標登録しようとした点である。そもそも、Tシャツの前面に大きく描かれた図案は、Tシャツのデザインであって、商標ではない。商標というのは、そのTシャツの出所を示す目印であるから、一般には、襟口の織りネームや下げ札に表わされた文字、図形等である。勿論、Tシャツの前面に商標が表される場面もある。例えば、NBAやMLB等、アメリカのプロスポーツのチームシンボルを表すような場合である。即ち、これらは、マーク自体がチームを表すものであり、それをTシャツに表しただけにすぎない。換言すれば、まちおこしのシンボルとしてパンフレットやホームページに「マグロ一筋」を表し、その広告宣伝の一環として、Tシャツに表すのであれば、商標として機能していると言えるであろう。しかし、Tシャツのデザインのみをもって商標として機能しているということはできない。

 特許庁が商標登録したのは、「マグロ一筋」がTシャツのデザインとして使用されていることを考慮したことに起因するのではない。あくまでも、「マグロ一筋」が商品「被服」等の自他商品識別標識として機能し得る標章であったからにすぎない。

 また、記者は、類似品防止に一定の効果がある、と述べているが、これも直接的な効果ではない。第三者が無断で「マグロ一筋」を表したTシャツを販売し、それが訴訟になれば、事実関係を総合的に考慮することにより、結果として商標権侵害という判決も想定し得る。しかし、それが商標的機能を有しているか否かの議論を突き詰めれば、反対の判決も十分あり得る。

 せっかく商標登録されたのであるから、この「マグロ一筋」を各種商品の商標として利用するか、或いは、一定の認証ブランドとして、つまり証明商標として活用されることを切望する。

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