|
F
甲第5号証の機関誌、広報誌等は商品性を有しないとの商標権者の主張について
商標権者は、機関誌、広報誌等は、市場において独立して商取引の対象として流通に供されているものであるとは考えられず、定価が付されているものであっても実際には商品として販売されていない雑誌・機関誌等の刊行物は、商標法上の「商品(雑誌)」には該当しない旨主張している。
しかるところ、商標法は「商品」についての定義規定をおいていないから、甲第5号証(枝番を含む。)に示された機関誌等の定期刊行物が商標法上の商品ではないと解すべき法的根拠はない。他方、商標権者は、上記主張をするものの、これらの定期刊行物が商標法上の商品には該当しないとの証拠を示してはいない。
そして、甲第5号証(枝番を含む。)の機関誌には、「年間購読料5,000円」(甲第5号証の2、「書店ではお求めになれません。」と記載されているが、購入申込先が表示されている。)、「頒価200円」(甲第5号証の4)、「定価1500円」(甲第5号証の11)、「定価300円」(甲第5号証の14)のように価格が表示されているものがあり、この事実によれば、これらの各書証に係る定期刊行物が商標法上の「商品」でないとは一概にいいきれないものである。
してみれば、甲第5号証(枝番を含む。)の機関誌が商標法上の商品に該当するか否かは、これらが商品として取引流通過程におかれるか否かにより、個別具体的に判断されるものというべきである。
この点について、「商標法上の商品とは,商標制度の目的に照らすと,流通性があり市場で取引の対象となり得るもののことであると解するのが相当である。これを『印刷物』についていえば,一般の書店において販売されるものでなくとも,インターネット等の通信販売,その他何らかの販売経路を通じて,不特定多数の需要者に対し,譲渡する対象となり得るものであれば,これを商標法上の商品ということができると解すべきである。」とした裁判例(東京高裁 平成15年5月20日判決 平成15年(行ケ)第14号 最高裁ホームページ)も存するところである。
|
本件における上記の甲各号証の場合、価格を明示し、発行者(団体)等を明らかにして刊行されている以上、不特定多数の購入希望者が当該刊行物を購入することができるというべきであって、これを商標法上の商品ではないとすべき理由はない。
なお、乙第4号証の裁判例は、被告が会員及び一般人に配付した月刊パンフレットが被告の営業の宣伝の目的で無料で配布されていることなどを理由として当該パンフレットの商品性を否定した事例であり、本件には妥当しない。
そして、仮に、甲第5号証(枝番を含む。)の定期刊行物の中に、商標法上の商品とはいえないものが含まれていたとしても、当該刊行物の題号の一部に「NPO」の語が使用されていることは明らかな事実であって、商標の識別力の有無が争われている本件においては、この事実が、取引者・需要者による本件商標の自他商品識別力についての認識の程度を低めこそすれ、その程度を高めることとなるとはいえず、甲第5号証(枝番を含む。)の定期刊行物中に商標法上の商品とはいえないものが仮に存在したとしても、本件取消理由を否定することにはならないというべきである。
6.私見
本異議決定は、商標法第3条第1項第6号を根拠としており、その理由を(1)「雑誌、新聞を指定商品とする商標の自他商品識別力について」と、(2)「本件商標の自他商品識別力について」とに大別し、(1)については、@「雑誌、新聞」を指定商品とする商標の一般的登録要件と、A「雑誌、新聞」の題号に関する審査基準に分け、(2)については、@の本件商標の構成と創作性の程度に始まり、Fの機関誌、広報誌等は商品性を有しないとの商標権者の主張についてまで、詳述している。
この論法は、「雑誌、新聞」の題号といえども、商標法第3条第1項第3号の登録要件と同質であり、審査基準についても「原則」と謳っているにすぎず、その例外がある、との前提の下に、本件商標についても、一般の商標の登録要件と同様に、商標の構成や創作性等について逐一検討した結果、商標法第3条第1項第6号に該当する、という流れである。なお、上記
|