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商標「NPO」の異議決定に対する一私見 (01・目次/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/13)

(2)の本件商標の自他商品識別力については、@からFまで細分化して論じられているが、要は、狭義の自他商品識別力と独占適応性の問題と捉えることができる。
 そこで本異議決定を吟味するに、まず、この争点は、商標法第3条第1項第3号の問題であったはずであるが、いつの間にか、同第6号の問題に掏り返られている点に疑問がある。次に、雑誌や新聞等の定期刊行物の題号と一般の商標との異同が問題である。以下、商標法第3条第1項第3号と同第6号の関係について言及し、同第3号の適用性、同第6号の適用性について言及する。

(1)商標法第3条第1項第3号と同第6号の関係
 登録異議申立人は、上述したとおり、想定し得る申立理由を悉く挙げ、その法的根拠を6つ挙げているが、取消理由通知及び異議決定の根拠は唯一、商標法第3条第1項第6号のみである。
 しかし、この問題は、商標法第3条第1項第6号の問題であるのだろうか。異議決定を分析していくと、明らかに論理の飛躍がある。
 本件の争点は、商標法第3条第1項第3号に関する「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」との審査基準の解釈の問題であった。
 この点について、異議決定は、審査基準が「審査上、自他商品識別の標識力があるものとする取り扱いをすべきことを定めたものと解することはできない。」とし、商標法第3条第1項第3号に関する所謂「ワイキキ」事件の最高裁判決を引用している。
 また、異議決定は、「商標の一般的登録要件について総合的に検討した結果、『雑誌,新聞』を指定商品として登録出願された商標が、商標法第3条第1項第3号の適用を受けることがあるのはもとより、同号の適用がないとされる場合に、同号を除く同項各号の適用を受けることも当然あり得る」としているのである。
 即ち、6号を適用するのであれば、3号の適用の可否についてまず論じ、3号の適用がないと判断した上で6号を適用すべきであった。しかし、3号の適用の可否については、一切論じられていない。
 なお、現在の特許庁における商標法第3条第1項各号の適用に関する運用は、第3号と第6号の切り分けが極めて曖昧になっているが、問題である。

いずれかの規定に該当するのだから、いずれを根拠にしてもよいのではないか、というような発想があるように思えてならない。しかし、商標法第3条第1項第6号は、「前各号に掲げるもののほか」と明確に規定しているのである。したがって、第6号を適用するには、第3条第1項第1号から第5号までに該当しない場合に限られるのであるから、本異議決定においても、この点については、明確な理由付けがなされるべきであったが、この点については等閑に付されている。

(2)商標法第3条第1項第3号適用の妥当性
 上記(1)において述べたとおり、今回の異議決定の前提は、商標法第3条第1項第3号の問題である。したがって、以下、本件商標が同号に該当するか否かについて論ずることにする。
 まず異議決定は、最高裁の判決を一般論として引用している。
 この判決において重要なところは、商標法第3条第1項の判断に際しては、自他商品(役務)識別力と独占適応性が必要要件である、という点である。
 その意味において、この最高裁の判決は、原則論として先例の価値があろう。しかし、具体的に検討すれば、この最高裁の判決は、商品「化粧品」の産地、販売地表示に関するものである。引用文の後には、次のように、記されている。
 如上のような商標を商品について使用すると、その商品の産地、販売地その他の特性についても誤認を生じさせることが少なくないとしても、このことは、このような商標が商標法4条1項16号に該当するかどうかの問題であって、同法3条1項3号にかかわる問題ではないといわなければならない。そうすると、上記3号にいう『その商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』の意義を、所論のように、その商品の産地、販売地として広く知られたものを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであって、これを商品に使用した場合その産地、販売地につき誤認を生じさせるおそれのある商標に限るものと、解さなければならない理由はない。
 即ち、この最高裁の判決は、「ワイキキ」が商品の産地、販売地表示として広く知られていないとしても、商品の産地、販売地表示として商標法第3条第1項第3号に該当する場合がある、と判示しているだけなのである。つまり、かかる最高裁の判決は、一般の商品にこそ先例としての価値があるが、殊雑誌や新聞等の定期刊行物の題号に関する判断基準として適切であ

(07/13)

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