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商標「NPO」の異議決定に対する一私見 (01・目次/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/13)

るか否かは疑問がある。
 しかし、いずれにしても、商標法第3条第1項の判断に際しては、自他商品識別力と独占適応性の2つの観点から判断することが必要であることは確かである。
 そこで、本件商標を自他商品識別力と独占適応性の2つの観点から検討する。

 

@ 自他商品識別力について
 新聞や雑誌の定期刊行物の題号は、他の商品や役務と異なり、原則として自他商品識別力がある、とされるのは、いったい如何なる理由に基づくのであろうか。
 「新聞・雑誌は、特定出版社が毎日、毎月継続的に編集するものであるがゆえに、それがたとえばスポーツ、野球、麻雀、釣り等いかなる内容のものであるとを問わず、それぞれ個性を有し、たとえば同じスポーツに関する雑誌でもA社とB社とその内容は必ず異なるものであるはずである。このような実体を考えるならば、新聞・雑誌の題名は、たとえそれがその内容を表すものであっても、その内容が出版社ごと、新聞社ごとに異なるものであるから、同一題名のものが存在しない限りは他の新聞・雑誌と十分識別し得るはずであって、自動車に「自動車」、石鹸に「中性石鹸」等の商標を使用する場合と識別力の点において、その事情を異にするものである。相撲、暮らしの手帳、日刊スポーツ等のように、一般の商品にあっては、その品質内容を表示するものとされるような商標が新聞・雑誌については認められているのは、それが題号として使用されることによって、特定の出版社の個性ある商品たる新聞・雑誌であることを示す出所標識・識別標識としての機能を十分果たし得るものであるという事情によるものである。」(網野誠「商標(第6版)」241頁)とされる。
 即ち、新聞や雑誌の題号が自他商品識別力を有するとされるのは、形式上、審査基準に規定されているからではなく、新聞や雑誌の題号の商標としての機能が勘案された結果なのである。そして、同一の題名が存在しない限り、他の新聞や雑誌と十分識別し得るのであるから、例外的に識別力が認められない場合というのは、同一の題名に相当する範囲に限られる、というべきである。換言すれば、審査基準において例外的に識別力が認められない場合というのは、同一の出所に係る定期刊行物であると認識、理解される場合であると解することができよう。

 実際、審決においては、以下の商標が同一の題名と判断され拒絶されている(なお、以下、文献名は、特段の表示がない限り、拒絶査定不服審判である。)。
・ 「世界」と「世界新聞」(審判昭50-1995)
・ 「科学」と「科学マガジン」(審判昭51-3631)
・ 「いちご新聞」と「いちご」(審判昭54-835)
・ 「週刊フレンド」と「フレンド」(審判昭60-20554)
・ 「月刊実話TIMES」と「実話タイムス」(審判昭61-5574)
・ 「MISUMI」と「月刊みすみ」(審判平6-8200)
 このように、「新聞」や「マガジン」の他、「週刊」や「月刊」等、刊行期間を表す語の有無は、同一の題名として判断されてきたのがこれまでの実務である。
 なお、例外的に、以下の商標が審査段階では、「富士」「不二」「Fuji」からなる各登録商標等に類似であると判断されたものの、以下の商標は「ユウカンフジ」の称呼を生ずるものであって、類似しない、と判断されている(審判昭55-10104)。

 その理由は、以下のとおりである。
 「新聞」及び「雑誌」の取引において、定期購読等のある特殊の場合を除けば殆んどの需要者は、自己の趣味に合ったものを購入した経験に基づき、編集方針を異にする様々の同種商品の外形を目視して、他の商品と誤認することなく意欲した商品を識別しており、「新聞」及び「雑誌」の商標から生ずる観念そのものは、特段の事情が存しない限り、自他商品の識別力が極めて乏しく、商品の出所表示機能を果すことが甚だ稀であることは、この種商品の取引の経験則に徴して明らかである。
 即ち、新聞や雑誌の題号における観念は、商標の類否判断に際して、重要な要素にはならない、とされているのである。その意味において、以下のように、商標の有する語義が近似するものであっても、非類似と判断されている、ということができる。
・ 「アルバイト情報」と「アルバイト速報」(無効審判昭50-684)
・ 「アルバイト情報」と「アルバイトニュース」(同上)
・ 「日刊 東京アルバイト情報\パートタイマー」

(08/13)

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